自分の名前は、柏原流星(かしわばら・りゅうせい)。
今年、24歳。
中堅の小売業の営業部に所属している。
大学を卒業後、今の会社に就職して、間もなく2年。
営業の仕事は、好きではないが、嫌いでもない。
仕事は一通り覚えていて、
「社会人って、まぁこんなもんか。」
というのが、今の心境。
会社の業績は、悪いとは聞いていないけど、良いわけでもないらしい。
給料は、問題なく生活できる程度にはもらえている。
しかし、冬のボーナスは、がっくりするくらい少なかった。
業界の見通しも、あまり良くはなさそう。
まだ2年目だけど、それくらいは肌で感じられる。
今の会社で昇進していっても、給料はそこまで上がらないだろう。
上司たちも、最近は愚痴ばかり言っている。
大学時代の友人の話を聞くと、友人達の方が年収は高そうだ。
彼らと話すたびに、正直少し気が退けてしまう。
会社には禁止されているけど、副業に手を出してみようか?
株??
FX??
それとも、不動産投資…??
将来に備えて、色々なことを夢想してみる。
しかし、現実はそんなに甘くはないだろう。
一歩を踏み出す勇気が出ない。
それより、流星は最近ストレスを感じていることがある。
直属の上司にあたる、営業部のチームリーダーだ。
30代前半の上司は、今年、出世競争で同期に先を越された。
それが原因なのだろうか。
最近、相当ストレスが溜まっているように見える。
能力は高くないが、プライドだけは人一倍高い。
一番、厄介なタイプ。
正直、チームの業績は悪くない。
だけど、メンバーに対する当たりがとにかく強い。
売り上げを伸ばすための施策について、詰められる。
会社から支給されているスマホのせいで、夜中も、休日も関係ない。
会社支給スマホのLINEで、延々と議論に付き合わされる。
しかも、少しでも返信が遅いと、すぐに機嫌が悪くなる。
こっちは休日だというのに、怒りに満ちたメッセージをぶつけられる。
最近は、会社のスマホを見るのが苦痛でしょうがない。
これは、明らかにパワハラだ。
他にも、社内の雰囲気が良くないと思うところが少なからずある。
女性たちの人間関係も、表面からは分からないが、険悪らしい。
全体的に、社内の人間関係はかなりギスギスしているのではないかと思う。
そして、無意味にアナログ。
「なぜこれをわざわざ印刷して手書きして提出なきゃいけないの?」
と思うような、社内の事務手続きがたくさんある。
どこの会社も、こんなものなんだろうか??
そして、つい先月。
同じチームの先輩が転職した。
先輩は、27歳。
かなり優秀な先輩だった。
先週、転職祝いとして、新卒1年目の後輩を交えて、3人で飲みに行った。
先輩は、どうやら全く関係ない業界に転職したらしい。
転職理由は、、、まぁ想定通り。
今の会社にいても、将来が見通せなかったこと。
リーダーのパワハラに耐えられなかったこと。
この2つが大きかったそうだ。
先輩は優秀だから、どこに行ってもやっていけるだろう。
そう思っていた矢先。
後輩から、思ってもみなかった言葉が飛び出した。
「実は、僕も転職活動始めたんですよ。」
えっ!?
まだ入社して1年経っていない後輩が、既に転職活動を始めている?
転職したい理由は、先輩と同じ。
「あのリーダーとは、ちょっともう無理だなって。」
「ずっとこの会社で働くイメージが湧かないです。」
「年収上げたいですし。」
呆然とする自分を尻目に、先輩と後輩は転職活動の話で盛り上がりはじめた。
後輩は、かなり積極的に活動しているらしい。
先輩も、自分の経験を踏まえて、後輩にアドバイスしている。
話を聞くと、二人とも、色々とチャレンジしているようだ。
求人広告を見て直接応募したり。
転職エージェントを使ったりもしている。
転職エージェントは、誰もが知る大手から、聞いたことのない中小まで。
並行して何社か使っているらしい。
先輩の話を聞いていると、転職活動も、なかなか奥が深そうだ。
直接応募だと、なかなか書類が通らない。
人気の求人には、山のように応募が来ているのだろう。
そんな中、自分一人の力で勝ち抜き、内定まで漕ぎつけるのは至難の業だ。
大手のエージェントは、担当者も若手が出てくることが多い。
出してくれる求人案件数も、さすが大手は数が多い。
しかし、対応は事務的で、ドライな感じ。
担当者も、大勢の求職者を抱えていて、忙しそう。
1人1人に丁寧に対応している時間はないのだろう。
職務経歴書や履歴書も、添削すると言いつつ、ほとんど何もしてくれなかった。
求人案件をとにかく沢山くれて、「数打てば当たる」な感じ。
中小のエージェントは、年齢的にも経験豊富そうな担当者が出てくることが多い。
出してくれる求人案件数は、もちろん大手に比べると少ない。
しかし、対応はかなり丁寧で、親身に話を聞いてくれる。
今後のキャリアを見据えた、具体的なアドバイスもくれる。
そして何より、1人1人を大事にしてくれる感じ。
「数打てば当たる」より、「打率」を重視。
職務経歴書や履歴書も、かなり細かく直してくれたそうだ。
「でもまぁ、結局は担当者との相性だよね。」
というのが、先輩と後輩の一致した見解。
余力があれば、色々なエージェントと話してみるのも良い経験になるのだとか。
先輩が最終的に転職先を決めたのは、
Morningside Agent(モーニングサイド・エージェント)
という中小のエージェント経由。
ネットでたまたま見た広告経由で、エントリーしたとのこと。
「土日の夜でも話聞いてくれるってところ、あんまりなかったからさ。」
…確かに。
いくらオンラインでいいと言っても、平日は夜遅くまで忙しい。
仕事から帰ってから話をするというのは、正直疲れる。
それを考えると、土日の夜でもオンラインで話ができるというのは、ありがたい。
「担当者も、けっこうな経歴の人だったけど、凄く話しやすかったよ。」
聞くと、どこかの会社の社長や副社長を経て、
売上高数百億円の企業で役員を務めた経歴も持つ人だったとか。
そんな経歴の人と話す機会なんて滅多にないけど、的確なアドバイスが貰えそう。
「書類も、しっかり手直ししてもらったし。」
履歴書は書いたことあるけど、職務経歴書は書いたことがない。
そもそも、社会人経験もそんなに長くない中で、一体何を書けばいいんだろう。
自分に、アピールできる強みなど、あるのだろうか?
「俺も大して書くことないと思ってたけど、何だかんだでいい感じにしてれるんだよ」
…なるほど、そんなもんなのか。
書類をしっかり準備できるというのは、助かる。
「一応、年収も上がりそう。やっぱ、業界選びとか大事だよ。」
…確かに、業界選びは大事だ。
大学時代の同期の話を聞いていても、それはひしひしと感じる。
ある程度歳を取ると、収入に大きな差が出るというし。
どうせなら将来性のある業界に行きたい。
しかし、自分の経歴を活かせるところなんて、あるだろうか。
他社に行っても、自分のスキルは通用するだろうか。
先輩は、続ける。
「動くなら、早い方がいいよ。」
「歳を取れば取るほど、今の会社でしか使えない人間になっていくから」
「スキルとかは、まぁ何とでもなるよ。まだ若いんだしさ。」
先輩の言うことは、もっともだ。
後輩も、大きく頷きながら聞いている。
「Morningside Agent、かなりフランクに相談に乗ってくれるよ。」
「とりあえず、話だけでも聞いてみたら。担当者の連絡先、教えようか?」
先輩が、担当者の連絡先を後輩にLINEで送ったようだ。
「…じゃあ…僕も教えてもらっていいですか?」
…つい、口に出てしまった。
先輩から、すぐに担当者の名前と連絡先がLINEで送られてきた。
「広告経由と紹介が半々くらいだって言ってた。」
「俺からの紹介って言ったら、色々と良くしてくれるかも(笑)。」
先輩は笑顔だ。
新しい会社で、大変なこともあるだろう。
しかし、先輩は前を向いていて、やる気と希望に満ちた表情をしていた。
羨ましい。
自分も転職について少し考え始めてしまった。
家に帰って会社のスマホを見た。
LINEが何件か届いている。
多分、チームリーダーだろう。
胃がキリキリと痛くなる。
会社のスマホは、見なかったことにする。
そして、パソコンを開き、メールソフトを立ち上げた。
先輩から貰った連絡先を、宛先に入力。
…と、そこで手が止まった。
「…やっぱり、直接エントリーする方がいいかな。」
転職すると、まだ決心したわけでもない。
先輩の名前を出すことに、ちょっと引け目を感じてしまった。
「まずは、とりあえず、話を聞いてもらうだけ。。。」
流星は、Morningside AgentのHPを開き、登録フォームへのリンクをクリックした。
続きはこちらから